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トレーニングのヒント2 〜ローラー駆動とフォーム〜

1.はじめに
車いすマラソンは、選手の精神的能力、身体的能力(筋力・持久力等)、車いすの性能、技術(ポジション・フォーム・レース駆け引き等)が関連し、競技成績を左右すると考えられます。そこで、その中の一つ、技術力を評価する目的でトレーニングローラーを使用して選手の駆動フォームを調査しました。


2.対象と方法
世界記録保持者のハインツ・フレイ選手と国内の有力選手9名の合計10名を対象としました。
ローラー上での駆動フォームをビデオに記録して2次元の画像解析を行いました。使用したローラーは市販のトレーニング用ローラー(TOP END社製)でした。5分間持続可能な、できるだけ速い速度で駆動していただきました。なお、ローラー上の選手には駆動スピードをお知らせしておりません。選手は自分の感覚で自分のペースを確認しながら駆動しています(図1)。選手の頭部、頬部、肩峰、肘、手首、親指先端、体幹中央、車軸、ハンドリム、大輪の合計10ヶ所にマークを付けて行いました(図2)。




駆動フォームを解析するにあたり、次の4つの視点を設定して観察しました。
@コンタクト期(ハンドリムに指が触れ力を加え始める段階で、大輪の回転スピードを落とさないことが重要になります)
A推進期(推進力のための力を大輪に加える段階で、速く、長く力を伝え続けることが重要です)
Bリリース期(ハンドリムから手が離れる瞬間です)
Cリカバリー期(リリース期から次のコンタクト期までの間の段階で、ハンドリムに手が触れていません)




3.結果と考察
代表的な結果をスティックピクチャーで示します(図3)。
左の選手はフレイ選手です。フレイ選手はポジションを車軸の後方にとり、重心が車軸の後方にあります。
コンタクト期は11〜10時の間で脇を広げずに、手関節は橈屈しています。推進期では回転を意識してハンドリムを回すように十分に力を伝達し、リリース直前のフィニッシュを大切にしていることが観察されました。リリース期は4〜3時の間で、ハンドリムの内側を中手骨骨頭部分を使い、肩関節を内旋させ、前腕を回内させて最後までハンドリムに力を伝達させています。リカバリー期では肩を大きく伸展して肘を高い位置に保ち、同時に肘を屈曲させて手は低い位置を保っています。親指先端の軌跡はハンドリムに並行して動いていることが分かります(図3)。リリース直後から大きな動作を控え、次のコンタクト期の準備をしていることが分かります。フレイ選手の一駆動周期は正確に0.5秒で、その半分の時間0.25秒間ハンドリムに触れていました。
一方、右側の選手は、車軸に対して重心が前方にあり、座る位置も高く体幹が前傾しています。コンタクト期は10時で脇が広がる傾向がありました。推進期の前半はハンドリムに十分に力が伝わっているようでしたが、後半、特にフィニッシュの時の力の伝達は不十分でした。リリースは5時に行っています。推進期の終了時期であるこの時期に手関節を使って最後の回転エネルギーをハンドリムに伝えることができていないようでした。リカバリー期のフォロースルーは上方向に大きく、一見ダイナミックなフォームに見えましたが、肩関節の伸展可動域が不十分なため体幹が大きく上下に動揺しています。体幹が上方に動揺することにより、進行方向に対して負の加速度が発生し、ダイナミックなフォームから繰り出される大きな推進力がリカバリー期に相殺される結果となっていました。この選手の一駆動周期は0.62秒でした。




4.まとめ
選手の協力を得てローラー上の駆動フォームを観察しました。
今回はフレイ選手との比較を中心に、選手の駆動の特長を明らかにしようと試みました。世界記録保持者の駆動フォームを解析することは何らかのヒントを提供してくれるはずです。しかし、すべての選手にとって必ずしもフレイ選手がお手本になるわけではありません。ご自分の特性に応じた駆動フォームの構築こそ重要な課題であると考えています。
前回のローラーを使った駆動練習で持続駆動速度を意識することに併せ、今回のフォームに関する情報が皆さんの競技力アップにお役に立てば幸いです。


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