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心拍数の比較



1.はじめに
心拍数調節は交感神経と副交感神経の二重支配を受け,心疾患が無い限り最高心拍数の上限は年齢で制限されています.また,頚髄損傷四肢麻痺(頚損)者は上位中枢から心臓への交感神経支配が頸髄で遮断されているため,最高心拍数の上限が低いことが知られています.しかし,激運動時には液性(ホルモン)の調節などにより心拍数の上限が変化していることも考えられます.実験室では激運動を長時間負荷することは困難です.そこで,活動性の高い頚損選手を対象に,車いすハーフマラソン時のレース中心拍数変化を観察し,激運動時の心拍調節を考察することを目的に本実験を計画しました.


2.対象と方法
対象は,第19回大分国際車いすマラソン大会,ハーフマラソン出場選手の頚損8名(32.0±8.0歳,完全麻痺5名,不全麻痺3名)でした.同レースに参加した外傷性脊髄損傷対麻痺(脊損)選手6名(41.2±12.1歳)を対照群としました.被検者全員のレース中の心拍数変化を心拍数記録装置に記録し,レース開始後30分間の平均心拍数とレース終了前30分間の平均心拍数を比較しました。




3.結果と考察
頸損選手1名は競技規定により完走できませんでした.脊損選手1名は完走しましたが機械的なトラブルで心拍数の記録ができませんでした.両群とも,レース開始と同時に心拍数の上昇が観察され,レース中の心拍数は頚損選手でも上昇することが確認されました.頸損選手のレース中の平均心拍数は114.7±9.1 beats/min(n=7),脊損選手は176.2±16.2 beats/min(n=5)でした.脊損選手に比べ,頸損選手のレース中の平均心拍数は有意に低い値でした.また,頸損選手では,完全麻痺選手と不全麻痺選手で心拍数変化が異なることが認められました.さらに,同じ不全頸損者でもレース中の心拍数変化に相違があることが認められました.レース開始後30分間の平均心拍数は,頸損選手115.1±9.5 beats/min,脊損選手は177.5±14.7 beats/min,レース終了前30分間の平均心拍数は,頸損選手114.4±8.4 beats/min,脊損選手175.1±17.3 beats/minでした.両群共に,レース開始時と終了時の平均心拍数に差はなく,液性因子の心拍数調節を示唆する結果は認められませんでした.車いすハーフマラソンを完走するような高い運動能力を持った頸損者でも,心拍数上昇制限という障害と戦いながらスポーツを行っていること,頸損者における心拍数上昇の制限は上位中枢から心臓への交感神経調節障害によるものであることが推察されました。




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